ファミコン探偵倶楽部『消えた後継者』は、1988年に発売された推理もののアドベンチャーゲームだ。昨年末にNintendo Switchを手に入れた私は、迷いなくこの名作のリメイク版を購入した。
……が、私が当時プレイして記憶しているのは続編の『うしろに立つ少女』のほうであり、消えた後継者のストーリーは1割も覚えていない。『ポートピア連続殺人事件』のように「犯人はヤス」くらいは覚えているかと思ったが、プレイを進めていても誰が犯人がまったくわからない。
天地がいい人でないことはうっすら記憶にある
物語は、空木探偵事務所に勤める主人公が何者かに襲われ気絶していたところを、天地という紳士に救ってもらうことから始まる。主人公は明神村の綾城家当主・綾城キクの不審死を追っていたが、殴られたショックで一部の記憶が吹っ飛んでおり何も思い出せない。
天地はそんな彼をひどく心配し、見ず知らずの少年を自宅にまで招いてあれこれ世話を焼いてくれるのだが……。
天地に裏の顔があることはなんとなく覚えていたし、そうでなくとも怪しさ満開なので物語にどのように関わってくるのか楽しみではあった。……が、まさか捻りなしにコイツが犯人だとは思わなかった。
しかも、有力な容疑者なのに出張中だとか来客中だとかで姿を見せない神田弁護士と同一人物だったとは、脇が甘すぎるのではないか？ ちょっと取材をすれば神田の顔写真なんて簡単に入手可能だったはずだ。主人公が神田＝天地だと分かった途端、一発で魂胆を知られることになる。
この展開が当時であれば斬新だったのかは残念ながら記憶にないが、綾城家の地下室で背後から犯人が表れたとき、いやストレートにお前かい！と突っ込んでしまった。
主人公の出自も王道中の王道
綾城家や明神村で別格視されていたユリの存在はもちろん、すでに他界していることもきれいサッパリ忘れていた。
ユリの息子が大きな手がかりを持っていることは間違いなく、後継者のクズ三兄弟（+アキラ）が全員亡くなった綾城家にとっても救世主といえる存在だが、主人公お前やったんかーい！とこれまた激しく突っ込んだよね。
この展開には上司の空木先生もびっくり仰天のはずだ。彼は主人公が15～6歳で母をたずねて三千里の旅している理由を知って預かってくれているし、主人公が無事に遺産を相続できたなら何割かを献上してもいいくらいの人格者だ。もっとも、主人公が後継者の印を返上しやがったので、しばらく安月給で働かせるほかないが。
豪華声優陣によるボイスドラマが魅力！
消えた後継者やうしろに立つ少女といえば、カタカタカタ……とタイプライターのような響きでセリフのテキストが流れるのが好きだったが、ボイスドラマも悪くないね。
主人公は『幽遊白書』の蔵馬役でデビューした緒方恵美氏だし、同僚のあゆみちゃんは『YAWARA!』の猪熊柔や『ドラゴンボールGT』のパン役でお馴染みの皆口裕子氏と最強の癒やし系だし、そして天地はあの杉田智和 （代表作： ジョジョの奇妙な冒険のジョセフ・ジョースター役） 氏ですよ。
杉田氏は声優界きっての「酷い下ネタを言っても許される男」で、高橋未奈美氏や花澤香菜氏にガチのセクハラをしているのに笑って済まされているうえ、なぜかファンからの株を上げている稀有な男だ。
杉田氏のキャラをダブらせながら天地のセリフを聞くと、なるほど、天地が表面だけが良い人だというのがよく伝わってきて楽しいい。
まとめ
令和の時代にプレイするとストレートすぎるシナリオに肩透かしを喰う面もあるものの、現代でも十分に通用する脚本だと思うし、素晴らしいグラフィックや超一流の声優陣が見事に世界観を彩っている。
リメイク版はたいてい（しょぼさも含めて）昔のほうが良いものだが、今作に限ってはNintendo Switch版だから飽きずにプレイできた面は多いにある。
最後に知っている方がいれば教えてほしいのだが、綾城和人の婚約者である雪子はどこにいったのだろう？
