【ネタバレ感想】映画『燃えよ剣』の感動度がイマイチなのは展開が駆け足すぎるから

【ネタバレ感想】映画『燃えよ剣』の感動度がイマイチなのは展開が駆け足すぎるから

新選組、そして土方歳三を描く物語はたくさんあるが、司馬遼太郎の『燃えよ剣』ほど土方歳三がキャラ立ちしている作品は他にないと思っている。 

だから見ないという選択肢はない。ないが、あれほどの大作が2時間や3時間で収まるのか? 聞けば、当初は原作のように前編・後編と分ける予定だったそうじゃないか。

  • 端折りすぎて各エピソードを薄くなでるような展開になっていないか?
  • 岡田准一をはじめとするイケメンキャスト陣は結構だけれど、ただイケメンを眺めてほんわかした気持ちになる女子ウケ映画になっていないか? 
  • たかお鷹氏に怨みはないが、井上源三郎を演じるには爺さんすぎないか?
  • Twitterで「燃えよ剣」と入れると「濡れ場」と出てくるが大丈夫なのか?

さまざまな不安を抱えて映画館まで足を運んだが、残念ながらそのほとんどが的中してしまった。以下、ネタバレで感想を語る。

いや、面白かったぞ!という人はこの時点で気分が悪くなっていると思うので、次の投稿でも見て癒やされてください。

ネタバレ感想】映画『燃えよ剣』の感動度がイマイチな理由
2021/日本 
上映時間148分
監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎
出演:岡田准一、鈴木亮平、山田涼介、柴咲コウ、ほか

あらすじ:武士になる志を胸に土方歳三は京都に入る。そして、同志とともに新選組を結成し市中を警護する任務にあたる。土方は厳しい規律を定め組織を統率し、幕府を倒そうとする勢力を制圧していく。動乱の日々の中、土方は1人の女性と関係を深めるが、時代の流れは倒幕へと向かっていく。

ラストの「新選組副長 土方歳三」にときめかない理由

燃えよ剣で最もしびれるのは歳三が特攻する直前のシーンだ。彼を薩摩の新人参謀と間違えた長州の士官に名前を聞かれ、「名か」と間を置いたところで、

「新選組副長 土方歳三」

と名乗る。このとき新選組はとうに消滅しているが、彼はどういうわけか「函館政府の陸軍奉行並」と名乗る気にはなれなかった。

この感情の流れを描写するには、新選組が崩壊するまでのストーリーをもっともっと丁寧に描かなければいけない。具体的には、連戦の大敗、永倉・原田との決別、甲陽鎮撫隊への名称変更、近藤勇との涙の別れ、函館政府の役職になっても根っこは変わらないバラガキの軍才などだ。

芹沢鴨の暗殺・池田屋事件・油小路の変などに尺を割くのは理解できる。しかし、燃えよ剣における最高のシーンは、歳三が最期まで新選組という作品にこだわるところなのではないか。

片田舎の農民出身のヤンチャ小僧が、武士どころか幕臣にまで取り立てられたのに、最期まで大切にした肩書は小さな小さな組織のナンバー2だったのだ。

といった流れがすっ飛ばれているに等しいので、ラストシーンで「新選組副長」と名乗られたところで逆に違和感がない。「うん、そうだよね」みたいな。よく理解していない人は、新選組という組織がまだ存在していると思ったかもしれない。

みんなが騒いでいる「濡れ場」とやらは不要に一票

Twitterで同作を検索すると、次のようなツイートがわんさか出てくる。

原作にそのような描写があっただろうか……? あるとすればお雪と歳三との逢瀬だろうが、お雪役の柴咲コウさんが話題になるほど過激なシーンをやるとは思えない。

鑑賞し、これか、と思った。芹沢鴨がお梅を白昼堂々、手篭めにするシーンがある。お梅役の月船さららさん(宝塚出身)が伊藤英明さんに着物をむかれ、乳房があらわになるのだ。

また、この記事によると他にも思春期の少年が小躍りするシーンがあったようだが、記憶にない……。

伊藤英明「勉強してきて良かった」柴咲コウに女性の胸もみしだく演技絶賛され

断っておくが、私は濡れ場を忘却するほど気の抜けた見方はしていない。バッチリ焼き付けて帰りたいとさえ思っている。意味を持つ濡れ場は感心すらするし、逆に何の意味も持たない純粋たるお色気はアイスの当たりくじを引いたような気分になる。

芹沢鴨というチンピラヤクザの横暴さを表現するために■姦シーンはあってもいいだろう。しかしポロリを入れる必要はあったのか? 生々しい陵辱が続くわけでもないし、まったくもって意味が分からない。

一番謎なのは、なぜ私がこれほど濡れ場にこだわり、憤っているのかだ。まさか、き、期待していたというのか(そんなはずはない)。

原作との小さくない差異にざわざわ

映画化にあたりオリジナリティを加えるのはよくある話というか、至極当然だと思うので原作との差異をとやかく言うつもりはない。

……すまん。前言撤回。言わせていただきたい。

新選組拝命の経緯

本作では、芹沢の借金を返しに言った歳三が、商家から「あなたがたは時代を変える選ばれし者だ」的なことを言われ感銘を受けたことがきっかけになっている。芹沢も「ふん!確かに良い名だな」なんて気に入っちゃったもんだから、このとき新選組に改名したっぽい。

つまり新選組は天子様または京都守護職から賜った有り難き名ではなく、商家のオヤジの発言をヒントに自分たちで発案したことになるのだが……。

新選組は国のトップから拝命した名だからこそ価値があり、落ちぶれた武士や農家出身の侍気取りの若者たちの心の支えになったのではないのだろうか?

藤堂平助 VS 土方歳三

原作でも映画でも、藤堂平助は近藤・土方を「愚物」と呼び、軽蔑するようになった。それはひとえに伊東甲子太郎の影響なのだが、近藤と土方は平助のことを非常に評価していた。だから油小路の変で対戦することになっても、平助だけは見逃してやるつもりでいたのだ。

「悪いのはたぶらかした伊藤であって平助ではない」と思っていたのかもしれない。

ところが、本作の歳三は藤堂を容赦なく斬り伏せる。歳三は確かに鬼の副長だが、試衛館以来の同士には多少の人間味を見せてくれる点が隠し味になっていたのに。山南敬介の切腹によって吹っ切れたのだろうか。

藤堂 VS 土方なんて勝負が見えているので、だったら服部武雄をはじめとする御陵衛士たちの奮闘ぶりを描いてくれるほうが良かった。

ただ、はんにゃ金田さんの藤堂は絶賛したい。伊勢津藩主・藤堂高猷の落とし子という噂に合致する品の良さを感じた。

ついでと言ってはなんだが、ウーマンラッシュアワー村本さんの山崎烝も素晴らしかった。池田屋での乱戦中に仲居から「十字屋はん!」と声をかけられ「十字屋ちゃうわ!新選組の山崎烝じゃ!」と怒鳴るシーンは、仲居は生き残るかもしれないんだから密偵としては正体ばらすなよ、とは思ったけれど。

七里研之助はなぜいるの?

燃えよ剣といえば七里研之助……とまでは言わないけれど、歳三とは多摩時代から因縁のある人物だ。歳三を付け狙って幾度となく登場し、なんと勝利しかけたこともある(沖田が助けに入る)。

架空の人物ということあり、私は彼に対して「お前…まだいたのか」という感情しか持ち合わせていないが、 七里と対比して歳三の成長を確認することもできるので、なくてはならないキャラではある。

しかし、だ。本作では歳三とのライバル関係をさほど描いていないのに随所で登場するため、「お前…なんでいるの?」状態でしかない。しかも謎のキャラ変を遂げて良い奴になっているし。七里の感情の変化や成長ストーリーはもう一度見れば理解できるのだろうか。

気になった口コミ

他サイトで書かれていた口コミで気になったものを引用する。大半は岡田准一さんを褒めまくる感想なのだが、やっぱ、こういう人もいるよねえ…という感想だ。

サミーの感想・評価
2021/10/27 16:26 2.5

「作り」 面白い点も多いのですが、特に後半が箇条書きというかダイジェスト感が満載なんですよね… フランス人が土方さんへの聞き取りをしている形での回想形式を用いて。 原作はなかなか厚みのある小説ですからそれを2時間半にまとめる・一本の映画にまとめるのにはこの形式が最も適していると監督さんは推敲したのでしょう。そこは理解と同情ができます。 それにしても特に後半はやはり薄っぺらいな〜と感じざるをえません。

https://filmarks.com/movies/82788?page=4

2.0つまらなかった
吉泉知彦さん 2021年10月26日

新選組には詳しくないので、誰が誰かあまりよく分からない。長編原作を無理に詰め込んだダイジェストのような内容で、物語に引き込まれない。岡田准一が小柄で迫力に欠ける。殺陣も間合いが変に近いし、構えがやたらと低い。美術はスケール感が出てていい。原作のファンである妻は、あの面白い原作をどうしたらここまでつまらなくできるのかと憤っていた。原作を読んでみたくなる。

https://eiga.com/movie/90757/review/

※土方の身長は166cmくらいだったと思う(当時の人はまだ小柄)ので、そこは適役だったとツッコミを入れたい。他は同意。

ErikaKの感想・評価
2021/10/26 15:21 3.0

岡田くんの演技とアクションはすごかったけど、原作とほぼ違ってた… 土方歳三の物語ではあるけど燃えよ剣ではないかなあ

https://filmarks.com/movies/82788?page=10

さいごに

館内はまだまだコロナということもあって客はまばらだったが、1/3が司馬遼太郎ファンであろうご年配の方だった。原作はお読みになっているだろうし、過去作の映画やテレビドラマもご覧になっているだろうと推測できる。

……どんな感想をお持ちになったのだろうか。岡田准一さんの殺陣はとても格好良かったので、意外と好評かもしれないが。

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