ひとことで言うと「思ってたとの違う……」だ。前作と同じ監督がメガホンを取っているのに、『バトルロ・ワイヤル』の1(深作欣二)と2(深作健太)より10倍くらい別物になっている。
荒廃した世界で生き残った人間がヒャッハー状態になっているという、既視感ありありのストーリーもそうだが、カーアクションバトルが異常に長いの点も残念だった。
ネットでは「残念なマッドマックス」などと酷評している人も多い。私はマッドマックスを観たことがないが、この映画のせいでマッドマックスも観ることはなさそう。
ガキが戦力になるめずらしい展開
良かったと思う点を挙げるとすれば一つ、子供が足を引っ張らないことだ。
私は、ホラー映画ではお決まりの、足を引っ張る子供キャラが大嫌い。だから、ジョンソク(主人公)の甥っ子を見て「うわ〜こいつがネックになってイライラさせられるのか〜」と冒頭からげんなりしていたのだが、秒で感染してくれてよかった。
その点、ジョンソクのピンチを救った姉妹は有能だ。特にお姉ちゃんのジュニは異次元のドライブテクニックを身に付けている。リアリティはないが、「あの母ちゃんにしごかれたんだろうな」「車はそこら中に転がってるし練習車には事欠かないな」とかの妄想で補えなくもない。
妹のユジンは、最後の最後で子供らしいミスをして祖父を死なせてしまうが、ああでもしないとソ大尉(及川ミッチー似)に殺されていたかもしれないし、無事にトラックを届けても香港人マフィアに蜂の巣にされていたのだから、結果オーライといえる。
香港を舞台にしたのは英語のセリフを使いたいから?
前作が思いのほかヒットし、韓国だけでなく世界からの評判を勝ち取ったせいで、「欧米の視聴者を意識して作ったのではないか?」という指摘を見た。
そう考えると、ハリウッド映画のようなカーアクションやCGを取り入れた理由がわかるし、舞台を日本ではなく香港にした設定もうなずける。やけに英語のセリフが出てくるのも、ジュニの英語レベルが謎に高いのも、ジェイン率いる米軍が救世主としてやって来たのも、欧米の視聴者にすり寄ったことが原因かもしれない。
我々は何度ヒャッハーを見れば許されるのか
韓国がゾンビ半島化した世界でも、一部の人々は立派に生き延びていた。しかし幅をきかせている(というよりNo.1の勢力?)のは、631部隊という元軍人たち。市民を守るはずの彼らはギャング化しており、ジョンソクの義理の兄・チョルミンはあっさり捕まってしまう。
彼らはまんま『北斗の拳』の雑魚キャラで、「ヒャッハー」とはしゃぐ以外に特技がない。一番の楽しみは、ゾンビ VS 捕えた人間の鬼ごっこ鑑賞。なんとも悪趣味だが、ギャングが支配する世界ではお決まりのエンターテイメントだ。例えば、ウォーキング・デッドの『ウッドベリー』でも似たような余興が行われていた。
しかし、総督やニーガンのように頭のキレるボスはいない。ファン軍曹は実力者だが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のビフを思わせる間抜けさがある。ヒャッハーキャラの最期はいつも戦略なしで突っ走った結果の自業自得で、スッキリはするがドラマはない。
使い古されたキャラを主要な登場人物に持ってくるのは、もうやめよう。できれば別の能力で組織を支配している大物を見たい。例えば、ゾンビを教育して人間のように接している博士がいるとか。……いや、それどっかで見たな。
さいごに
前作と関連する登場人物が一人も出てこないことに不満を感じている人もいるようだ。しかし、子どもたちと一生懸命暮らす母親役を、生き残ったチョン・ユミにしなくてよかったと思うのは私だけだろうか。あのすてきなチョン・ユミの無駄遣いになってしまう。
先日観た『#生きている』もなかなか残念だったし、韓国は、ゾンビものは『キングダム』に任せておけばいいだろう。
といいつつ、アマプラで韓国映画のホラーもの(こういうの)を漁る日々…。