少年ジャンプ+で連載中の『SPY×FAMILY』(遠藤達哉・著)のテレビアニメ版が大反響の雨あられである。同作の魅力は語り出すとキリがないのだが、細かいことは抜きして「アーニャのかわいい!」「ロイドかっこいい!」「ヨルさんすてき!」などでよい気もする。
試しにTwitterを覗いてみると、大半が「アーニャかわいい!」だった。皆キャラクターに骨抜きにされているのがよくわかる。これほど最強の幼児キャラがかつていたであろうか。
日本を代表する幼児キャラといえば『サザエさん』のタラちゃん、イクラちゃんだが、奴らはかわいいどころか憎たらしい。また、『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけは好き嫌いが明確に分かれる。
最近の作品でいえば『コタローは一人暮らし』のさとうコタローはアーニャに近い”大人たらし”であるが、アーニャほど大人を悶絶させる力は持ち合わせていないだろう。「首ちょんぱ!体ちょんぱ!」を筆頭にワードセンスも光っているし、遠藤達哉先生は怪物キャラを生み出してしまった。
疑似家族でもフォージャー家だけが居場所
アーニャの何気ない発言にほろりとくることがあるのは、幼児ながら辛い過去を抱えており、たとえ仮初であっても「家族と過ごす日常」を強く望んでいるからだ。
第1話で「すてたらやぁ〜」「アーニャお買い得だよぉ〜」と号泣するシーンは、その1秒後にケロッと泣き止むという小ネタの前フリであるが、ぐっと来た人は多いのではないだろうか。だって、彼女は少なくとも4回捨てられているのだもの。
ロイドは仕事のために疑似家族を演じているのであって、用済みになればアーニャとヨルをポイする選択肢を持っている。ヨルはロイドほどドライではないが、基本的な立ち位置は変わりない。
しかしアーニャは違う。彼女にとってロイドとヨルはもはや、この世に1人しかいない「ちち」と「はは」なのだ。仮初の家族がいつか終焉を迎えることを理解しながら、あるいは自分がエスパーだとバレたら捨てられることも理解しながら、できれば本当の家族になりたいと願っているのだ。
エンディング映像はアーニャの夢の世界
アーニャのそんな気持ちは3話より公開されたエンディングに詰まっていると思われる。アーニャ役の種崎敦美さんがPodcastで「あんなの泣くじゃん!」と評していたが、本当にマジで泣く。
星野源さんは『喜劇』を「家族という言葉の意味を想いながら制作した」そうだが、これほど歌詞もメロディもぴったりの曲があるだろうか。
エンディングの世界はアーニャの夢の中を描いているのだろう。アーニャは画面が4分割された世界で階段を駆け上り、さらにクロスワードの世界を4周しているように見える。これは、アーニャが4回里子に出されては戻されたことと無関係なのだろうか。
場転し、モノクロの群衆の中でさまざまな心の声を聴くアーニャ。背景とアーニャだけに色が付くと、行き交う人々のほとんどが家族連れになる。一人ぼっちで画面に背を向けるアーニャ。すると、モノクロで顔が見えないロイドがやってくる。
ロイドに手を引かれ、やや控えめながらも嬉しそうな表情で歩き出すアーニャ。そこに、やはりモノクロで顔が見えないヨルが加わり三人で手をつなぐと、アーニャに満面の笑みがこぼれる。もはや一人ぼっちなんかじゃない。幸せな群衆の中の一人だ。
ロイドに肩車され、サザエさん一家のように帰宅すると、それまでモノクロで顔が見えなかったロイドとヨルがはっきりと姿を表す。少なくともアーニャにとって、外での2人は仮初の家族である演技が抜けないのだろう。その他大勢とまでは行かないものの、微細な表情まで認識できないのかもしれない。
しかし、家の中に入るとロイドとヨルは愛情たっぷりだ。一緒にダンスを踊ってくれ、ご飯を食べさせてくれ、眠るまで優しく付き添ってくれる。幸せを噛みしめて眠るアーニャ。それを見守るロイドの影……。アーニャが恋い焦がれていたごく普通の生活である。
ミュージカル化まで決定したけど大丈夫か
唐突にエンディング映像の解説までしてしまったほど、このアニメにハマっている自分がいる。冒頭で述べたように細かな考察はなくても構わない。アーニャがひたすらかわいすぎるし、任務を二の次にしてアーニャの味方になるロイドが尊いし、猛牛相手に経絡秘孔を突いてその場の全員にドン引きされるヨルさんがすてきすぎる。
もう全身全霊で応援したい作品なのだが、ミュージカル化については不安がよぎる。アーニャ役はこれからオーディションするらしいが、よほどの逸材を掘り起こしてこないとファンは満足しないのではないだろうか。
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