Netflixオリジナルの韓国映画『#生きている(#살아있다)』が人気らしい。
【記事紹介】
パク・シネ主演『#生きている』、NETFLIXグローバル・ムービーチャート1位(朝鮮日報)
http://ekr.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/09/12/2020091280016.html
最近の韓国のゾンビ作品には期待ができる。観客動員数1,156万人を突破した『新感染 ファイナル・エクスプレス(부산행)』を皮切りに、その前日譚を描いた『ソウル・ステーション/パンデミック(서울역)』、ゾンビ×時代劇の異色ホラー『キングダム(킹덤)』と、非常に楽しませてもらっている。
しかし、結論から言えば『#生きている』には満足できなかった。既視感満載どころではないからである。
既視感その1.平和な日常から突如の大パニック
いつもと変わりない朝のはずが、世界は一変してソンビ地獄と化していた……。ゾンビ映画の定番よね。その前振りをほぼ1巻分かけて丁寧に描いた『アイアムアヒーロー』があるだけに、平和な日常からのゾンビパニックを見せられても不感症になってしまった。
既視感その2.走るゾンビ軍団
走るゾンビは目新しく感じるが、その歴史は意外に古く、1980年代の『バタリアン』などに行き着く。また、俊足すぎるゾンビ映画として度肝を抜いてくれた『28日後…』も忘れがたい(こっちは2002年)。
したがって、『#生きている』のゾンビが走りまくったところで特段のホラーは感じない。かといって、意味不明にメタモルフォーゼするゾンビもバイオくさく、塩梅が難しいところである。
既視感その3.ゾンビが生前の能力を残している
生前の習慣や能力を発揮するゾンビ、それも『バタリアン』シリーズで見た。最近の作品では『アイアムアヒーロー』もそう。走り高跳びの選手だったっぽいゾンビ(ZQN)が、2階のバルコニーまでジャンプして登ってくるシーンがあった。
『#生きている』でも、ゾンビ化した消防隊員がロープをたどって主人公の部屋に侵入しようとするシーンがある。ただ、淡々と走り高跳びを繰り返していたZQNと違い、「これ得意ィィィィ!!」みたいな表情を浮かべて登っていたのは良かった。
既視感その4.美少女が小ぎれいなまま生き残ってる
荒廃したはずの世界で、メイクばっちり、髪の毛つやつやの美少女が生き残っているのは謎。リアリティがなさすぎてテンションが下がる。ビジュアル要因なのは理解するが、『ウォーキング・デッド』のキャロルくらい変貌してほしいものである。
『#生きている』では、ゾンビが蔓延して1ヵ月やそこらしか経っていない設定だが、それでもきれいすぎやしないか。美少女のオシャレへやキャンに見える。
既視感その5.家族のためなら生贄を与える
どんな姿になっても家族は家族。ゾンビ化したからといって殺すなんてできない。結果、生贄として生きた人間を捕らえて食わせる……。
これも定番ですね。『バイオハザードII アポカリプス』でもそんあシーンがあったが、記憶に新しいところでは、『ウォーキング・デッド』の総督。
『#生きている』での類似のシーンは、韓国作品好きな人なら俳優さんを見ただけで悪役だと見抜けただろう。だってあの人がそんなに良い役をもらえるわけないもの(笑)。
でも新鮮!軍隊が機能している!!
ゾンビものは偉大な過去作品が多く、ネタ被りするのは仕方ない。だから『#生きている』は悪くない。ゾンビ作品に新しいものは求めない、そもそもゾンビ作品をあまり見たことがない、という人にはいいだろう。グロさも控えめ(というかほぼない)し、おすすめ。
なお、ラストでは間一髪のところを軍隊のヘリコプターが助けてくれるが、ゾンビもので軍隊が機能しているのは非常にめずらしい(警察は負けてしまったようだけど)。今後の流れは想像するしかないが、二人は生きることを強く望んでいるのだから、ハッピーエンドと捉えておくことにする。