劇場版「鬼滅の刃」を観てもやっぱり煉獄さんを評価できない3つの理由【ネタバレ有】

劇場版「鬼滅の刃」を観てもやっぱり煉獄さんを評価できない3つの理由【ネタバレ有】

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編を観てきた。原作ではあまり活躍する印象がなかった炎柱・煉獄杏寿郎の評判がすこぶる良いからだ。

興行収入は公開からわずか10日間で100億円を突破し、11月9日時点で200億円を突破したと、製作・配給のアニプレックスが発表した(https://eiga.com/news/20201109/12/)。このペースで行けば”300億円の男”も夢ではない。

そんなわけで期待に胸を膨らませていたのだが、煉獄さんはやっぱり煉獄さんのままだった。劇場版はオリジナルストーリーではないので、考えてみたら当然だ。よもやよもやだ。ではなかった。

以下、ネタバレを激しく含むので閲覧注意。あと煉獄ファンの方は気分が悪くなると思うので読まないほうがいいと思います。

【ネタバレ感想】劇場版「鬼滅の刃」を観てもやっぱり煉獄さんを評価できない3つの理由
2020/日本
上映時間:117分
監督:外崎春雄
原作:吾峠呼世晴
出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、ほか
Amazonプライム会員は今すぐ視聴可能

1.煉獄さん、指令に失敗してません?

煉獄さんが無限列車に乗車していたのは、あの列車を餌場にしている鬼を退治するためだ。すでに鬼殺隊隊士を含め40名以上が行方不明になっているため、柱である彼が出張ってきたというわけだ(54話「こんばんは煉獄さん」7巻収録)。

ところが煉獄さんは魘夢(えんむ)の血鬼術にあっさり引っ掛かり、爆睡してしまう。”精神の核”を破壊されるのは凌いだものの、鉄砲玉に使われたのは人間なので殺せない。結果、膠着状態が続く。石橋を叩いて渡る魘夢は様子見していたが、もちろん作戦変更も可能なわけで、煉獄さん一人では敗北していた可能性が高いと言える。

目覚めてからの戦いの描写を見るかぎり、煉獄さんと魘夢とでは勝負にならないし、魘夢は煉獄の戦闘力に驚愕していた。しかしあの戦いは戦略・戦術ともに魘夢の勝ちだったのでは……? 柱なら格下の鬼の技くらい見破ってほしい。

2.煉獄さん、せめて伊之助よりは早く起きません?

百歩譲って、血鬼術に掛かったのは仕方ないとしよう。魘夢は鬼舞辻無惨から生存を許された最後の下弦の鬼だ。だけど術を破ったのは竈門炭治郎と妹・禰豆子の連携プレーであり、煉獄さんは嘴平伊之助よりも起きるのが遅かった。

煉獄さんが一番に術を破っていれば、列車内が大ピンチに陥ることもなく、炭治郎らにより的確で余裕のある指示出しができたのではないか? 炭治郎が腹を刺されることもなかったのではないか? 4人総がかりで猗窩座(あかざ)を倒すことも不可能ではなかったのではないか?

そもそも、炭治郎らは運良く獲得した戦力だ。炭治郎らは指令中ではなく、炭治郎の個人的理由で無限列車に乗り合わせている…だったはず。

53話「君は」7巻収録
53話「君は」7巻収録

偶然に居合わせた戦力、しかも優秀とはいえ新人の平隊士に救われたという事実に評価が下がる。

煉獄さんは「穴があったら入りたい!」とポジティブな笑みで反省していたが、被害者が出なかったのは炭治郎らの活躍が大きく(個人的には伊之助を讃えたい)、皮肉にも魘夢の用心深さも幸いしている。

3.煉獄さん、普通にタイマンで負けただけでは?

煉獄さんとの激闘の末、逃走する猗窩座に対し、炭治郎がブチ切れながら以下のように叫ぶ(65話「誰の勝ちか」8巻収録)。

「煉獄さんは負けてない!!」
「誰も死なせなかった!!」
「戦い抜いた!! 守り抜いた!!」

……そうかな? 

確かに、魘夢との戦いには完全勝利したと思う。犠牲者はゼロで、自らも無傷だ(助太刀した炭治郎は重症を負ったけれど)。

しかしVS猗窩座となると、一対一の戦いで普通に敗れただけではないだろうか? 

猗窩座は戦闘狂で強い相手にしか目がなく、終始、煉獄さんしか見ていなかった。炭治郎を攻撃するシーンもあるが、煉獄さんの弱み(=守るべき後輩隊士や一般人)を狙う意図はなく、単に「話の邪魔になるから」と発言している(63話「猗窩座」/8巻収録)。純粋に、強者と認めた煉獄杏寿郎と二人きりの時間を過ごしたかったのだ。

したがって、炭治郎の「煉獄さんは負けてない!」は、猗窩座からすると「は?」となるのも理解できる。猗窩座が突如やって来た理由は謎だが、強い男の匂いを嗅ぎつけて来たとすると、魘夢とのバトルもよく知らないかもしれない(下弦の鬼に興味なさそうだし)。

そうだと仮定すれば、炭治郎に「誰も死なせかった!」と言われても、「そもそも杏寿郎以外狙ってねーよ!」と反論したくなるだろう。

さいごに

以上から、私が原作・映画を通して抱く煉獄さんのイメージはこうだ。

  1. 任務中に下手こいた
  2. 炭治郎らのヘルプがなければヒヤリ・ハットどころじゃない
  3. だからカッコいいこと言われても微妙
  4. 死んだ理由は一人の隊士として敗れただけ(言い換えれば自分を守るのに失敗した)

というわけで、SNSなどで絶賛されているような感想はあまりない。ただし「4」については運がなかったと言っておく。上弦の鬼は柱が3人掛かりでようやく倒せるほどの設定だからだ。にもかかわらず、あと一歩のところまで追い詰めたのだからめちゃんこすごい。彼の実力の高さは音柱・宇髄天元の「上弦の鬼には煉獄でさえ負けるのか」からも読み取れる。

しかし後付の設定とはいえ、煉獄さんには”痣”が発動しなかったし、猗窩座は「あれ以上強くならなかったかもしれない」と回想していることから、実力は中の上くらいが妥当な見方だろう。

まあ、煉獄さんにとっての強さとは弱者を守るために使うものであり、それが「彼の責務」なのだから、このような感想を読んだら反論されるかもしれない。

「君と俺とでは価値基準が違う」と。

映画カテゴリの最新記事